逆子治療(骨盤位)とは?

— 妊娠30週、今まで順調だったのに、健診に行ったら突然「逆子ですね」と言われた…。

こんなことがあると不安になりますよね。

  • 突然、逆子だと言われても、どうしたらいいかわからない
  • いろいろ直し方があるみたいだけど、どれが一番効果があるのだろう
  • 逆子の場合は帝王切開になるって聞いたけど…

などなど、考え出すときりがないと思います。

 

まず、逆子とは?

逆子とは、子宮内で赤ちゃんの頭が下ではなく、上を向いている状態のことをいい、医学的には「骨盤位」といいます。
本来であれば、赤ちゃんは頭から産道を通り抜けるため、頭は子宮口の方を向いていますが、逆子の場合は足やお尻が子宮口の方を向いています。

妊娠中期までは赤ちゃんの3050%は逆子の状態にあります。
それは子宮内に赤ちゃんが動き回るゆとりがあり、頭の位置は上を向いたり下を向いたり頻繁に入れ替わっているためで、固定されたものではありません。

妊娠後期になると、赤ちゃんの頭は大きく・重くなるので自然と下を向き、そこで固定されます。
しかし何らかの理由で赤ちゃんの頭が下を向かないと、子宮内を動き回るスペースがなくなり、頭が上を向いたまま固定され逆子になってしまいます。

出産時まで逆子が続く確率は全体の35%とされています。

 

逆子のままで経膣分娩を行うことを骨盤位経膣分娩といいます。
骨盤位経膣分娩に際しては、分娩外傷(骨折・神経損傷)、臍帯脱出、分娩遷延による新生児仮死・死産などのリスクがあります。そのため近年では、帝王切開が骨盤位の場合の標準的な分娩方法となっています。

しかし妊婦さんの中には、何とかして逆子を直して、経腟分娩での出産にできないかと考える方もおられると思います。

医師専用コミュニティサイトMedPeer( http://medpeer.jp/)では、2017年724728日にかけて、

  • 逆子になったらどうするべきか?
  • 効果のある治療法はどれなのか?

など、気になるところを産婦人科医に聞いている調査について、掲載があります。
産婦人科医149名から回答が得られた結果から、逆子になった際の対処法を知り、不安を解消しましょう。

 巷でよく言われているいくつかの逆子治療について、産婦人科の医師が考える、効果があると思う治療法(複数回答可)について聞いた結果は、以下の通りです(図1)。

 

「逆子を直すのに有効な『何らかの治療法』がある」とした回答が、約8割を占め、「特にない」とする回答が、2割という結果になっています。
それぞれの治療法についてみていきましょう。

 

逆子体操

治療法として一番の支持を得たのが「逆子体操」でした。

逆子体操には、

  1. 胸膝位(きょうしつい)法
  2. ブリッジ法

の2種類があります。

「逆子体操」を選択した医師の中で、特に多かったのは、「逆子体操から始めて直らなければ外回転術を行う」という意見でした。

一方で、逆子体操は、

  • あまり効果がない
  • 医学的根拠がない

という意見もありました。

しかし、レジーナでは「逆子体操は、逆子改善に有効である」と考えています。

 

外回転術

次に外回転術です。

「逆子体操がダメなら外回転術を試す」というコメントが多くみられましたが、外回転術とはどんなものなのでしょうか。

ある医療機関のホームページに、外回転術の具体的な方法が説明されているので、そちらをご紹介します。


妊婦様に仰向けに寝て頂き、頭側を下げ下肢側を挙上し、胎児が母体頭側に上がるような体勢をとります。
また、手技前からお腹の張り止めの薬を点滴投与させて頂き、子宮筋の緊張を和らげて胎児を回転させやすくします。
また、同時に麻酔をかけて(無痛分娩や帝王切開の時と同様の麻酔法です)腹筋の緊張を和らげて回転しやすくさせています。
張り止めの点滴と麻酔は現在では全例に行っています。
術者(1~2人)が超音波で胎児の向きを確認し、胎児の頭部と臀部にあたる部分を経母体的に把持し、児を前回り(場合により後ろ回り)になるように回転させ頭位に矯正します。

骨盤内に児の臀部がはまりこんでいるケースでは、場合により内診して児の臀部を持ち上げた上で回転させます。
おおむね手技に伴う時間は2-3分、長くても一回の手技は10分程度です。

引用元:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター


つまり、医師が妊婦さんのお腹を押すことで子宮内の赤ちゃんを回転させ、逆子を、正常な状態である頭位に戻す医療行為です。
医学的根拠の高い逆子の矯正法と言われています。

上記引用元の国立成育医療研究センターでの成績は、76.2%頭位に矯正(内訳:初産婦71.2%、経産婦86.5%)となっています。

しかし一方で、外回転術は破水や胎盤早期剥離などのリスクもあります。

また外回転術は、手技に熟練を要すること、可能性は少ないもののリスクを伴うことから、日本においては実施できる施設や医師が限られているので、施術を受けることを検討されているのであれば、主治医とよく相談しましょう。

 

横になって寝る向きの指導

横になって寝る向き(寝方)については、横になる時、赤ちゃんの背中が上になるように寝るとよいと言われています。
それは赤ちゃんが向きを変える時には必ず、でんぐり返しのように頭から前回りにくるりと回ると考えられているからです。

しかし調査では、「指導するが効果はあまりないと思う」とする意見がほとんどでした。

 

鍼灸マッサージ

得票数は少なかったのですが、興味深い意見として、鍼灸マッサージがありました。

「医学的根拠がない」との意見もある一方で、鍼灸で逆子が直ったという事例を経験されている医師が何人もいたのです。

この調査に協力してくれた医師がたまたまそういう経験のある方が多かったのかもしれませんし、鍼灸で直ったという証明はできないかもしれませんが、これは見過ごせない結果です。
鍼による出血や内出血、灸による火傷のリスクはありますが、やってみる価値はあると思います。

最後に、「特にない」を選択した医師の中には、

  • 医学的根拠がない
  • 無理に直すより帝王切開を行う方がよい
  • 医師自身の妊娠時に試してダメだった

などの意見がみられました。

 

逆子でもあまり心配し過ぎないで...

逆子を直すために逆子体操が有効とした医師の回答が一番多かったですが、「医学的根拠はない」とする意見もみられました。
また、外回転術も医学的根拠があるとして支持を得た一方で、破水や胎盤剥早期離などを引き起こすリスクが指摘されました。

以上から、逆子治療はどの方法も一長一短であり、これで必ず治るというものはなさそうです。

ですからあまり過度な期待をせず、「直ればいいな」程度にゆったりと構えましょう。

もし逆子が直らず帝王切開になることが不安な場合は、主治医に話をしましょう。