逆子というと特殊なケースに聞こえるかもしれませんが、妊娠中期までは赤ちゃんの30~50%は逆子の状態にあります。
それは子宮内に赤ちゃんが動き回るゆとりがあり、頭の位置は上を向いたり下を向いたり頻繁に入れ替わっているためで、固定されたものではありません。
妊娠後期になると、赤ちゃんの頭は大きく・重くなるので自然と下を向き、そこで固定されます。しかし何らかの理由で赤ちゃんの頭が下を向かないと、子宮内を動き回るスペースがなくなり、頭が上を向いたまま固定され逆子になってしまいます。
逆子は何週まで直る可能性がある?
妊娠週数と逆子の確立は次のように報告されています。
- 妊娠16週から23週(妊娠6カ月まで)→73.2%
- 妊娠24週から27週(妊娠7カ月) →34.5%
- 妊娠28週から31週(妊娠8カ月) →16.7%
- 妊娠32週から34週 → 8.8%
このように、週数の経過とともに逆子の確率は低下しています。
正期産(出産に最も適しているといわれている時期で、妊娠36週以降42週未満)に入る妊娠36週(妊娠10カ月)では、赤ちゃんの体重によって確率が変わります。
- 体重2,500g以上3,000g未満の赤ちゃん → 4.5%
- 体重3,000g以上の赤ちゃん → 3.1%
このように、妊娠24週頃から31週までに80%以上の赤ちゃんが自然回転して逆子が直ります。
一般的には、妊娠31週までに逆子は解消すると考えられています。
分娩時に逆子であるのは5%くらいです。
逆子には様々な種類がある?
一口に逆子といっても、その体勢にはいくつか種類があります。
逆子の体勢は、お尻を下に向けた「殿位」、膝を下に向けた「膝位」、足を下に向けた「足位」の3つに大きく分けられ、さらに足の状態で細かく以下のように分類されます。
殿位
お尻が下に向いている殿位は、足の向きによってさらに「単殿位」、「全複殿位」、「不全複殿位」の3つに分類されます。
逆子のうち殿位になるのは約75%で、他の体勢に比べて出産時のリスクが低い体勢です。
- 単殿位:お尻が下になっていて、両足が上にあげている状態(V字姿勢)
- 全複殿位:お尻が下を向いていて、体育座りのように両膝を曲げている状態
- 不全殿位:お尻を下に向けているのは全複殿位と同じだが、体育座りで片足だけを上にあげている状態
- 横位:赤ちゃんが横に寝ている状態
膝位
膝が下を向いている膝位は、両膝を曲げている「全膝位」、片足を上にあげている「不全膝位」の2つがあります。膝位になるのは、逆子のうちわずか約1%とされていて、出産時のリスクは中程度の体勢です。
- 全膝位:両膝を曲げて下に向けている状態(膝立ち位)
- 不全膝位:片膝を曲げて膝を下に向け、もう一方の足は上にあげている状態
足位
足を下に向けた足位は、両足を下に伸ばしてお腹に中で立っているような状態である「全足位」、片足を下に伸ばして、もう一方の足を上にあげている「不全足位」の2つに分けられます。
足位は、逆子のうち約24%がなるとされていて、出産時のリスクが最も高い体勢です。
- 全足位:両足を下に伸ばして、お腹の中で立っているような状態
- 不全足位:片足を下に伸ばして、もう一方の足は上にあげている状態
逆子にはどんなリスクがあるの?
お腹の赤ちゃんが逆子でも、妊娠経過や赤ちゃんの成長には影響しません、しかし、逆子の場合は分娩に様々なリスクが伴います。
- 前期破水
正常な体勢の赤ちゃん場合、赤ちゃんの頭が子宮の出口において卵膜と密着しているため、頭が下りてきてから破水が起こることが一般的です。
しかし逆子の場合、お尻や足は卵膜とはうまく密着しないため、子宮口の膜に圧力が直接かかり、赤ちゃんがまだ降りてきていない状態でも破水しやすくなります。 - 臍帯下垂
逆子の場合、子宮の出口と赤ちゃんに間に隙間があるため、破水時に赤ちゃんより先にへその緒が膣内に出てしまう恐れがあります。
この場合、胎盤からへその緒を通して流れてくる血流が滞ってしまい、胎児機能不全を引き起こす可能性があります。 - 微弱陣痛
逆子の場合、赤ちゃんの頭による子宮口の圧迫刺激がないため、陣痛が誘発されず、分娩に時間がかかりやすくなります。 - 新生児分娩外傷
逆子で経腟分娩を行う場合は、頭や手足が引っかかってしまったり、微弱陣痛のため分娩に時間がかかったりして、頭蓋内出血、脊椎損傷、四肢骨折、腕神経損傷などが起こりやすくなります。
分娩に時間がかかり、赤ちゃんにストレスがかかる状態が長引くと、赤ちゃんが低酸素状態になって仮死状態や後遺症を引き起こすリスクもあるため、赤ちゃんやお母さんの状態を考慮し、安全を最優先して、帝王切開を選択する施設が多いようです。
逆子で帝王切開を判断するタイミングは?
病院の方針にもよりますが、妊娠30~35週までに逆子を直す方法を試したり、経過を観察したりしながら、妊娠36週までに逆子が直らない場合には帝王切開が検討されます。
逆子であっても、殿位など比較的リスクの低い体勢なら、帝王切開ではなく自然分娩で出産できる可能性もあります。
どんな場合でも医師とよく相談し、納得のできる出産ができるといいですね。