逆子は妊娠中の女性にとってとても心配に思われる状態です。
逆子と診断されても、医師からは様子を見ましょうと言われてしまい、どんどん週数が過ぎていきます。

そして、医師からは、帝王切開になるかもしれないと言われてしまうと、ますます心配は深まっていきます。

逆子になってしまった原因を考えた時、胎児に何か問題や病気があるから逆子になってしまったのではないか、または、逆子である状態が続くと、胎児に悪影響を及ぼすのではないかと不安になる方もいらっしゃるのではないかと思います。
心配される胎児の問題の1つに、脳の発達の問題があります。

逆子

妊娠中はさまざまな不安や心配があるかもしれませんが、安心して赤ちゃんを迎えられるように、このページでは、逆子と脳の発達に関連があるのかどうか、解説していきたいと思います。

逆子とは、妊娠中に胎児が通常の頭位ではなく、足やお尻を下に向けた状態になっていることを意味します。逆子は医学的には「骨盤位」と言い、頭が上になっている場合、横を向いている場合、斜めになっている場合など、逆子にも種類があります。

赤ちゃんは28週頃まで子宮の中を自由に動きまわっているので、自然に逆子が直る可能性が高いのですが、週数が進むにつれて動けなくなっていき、逆子が直る可能性は低くなります。

逆子のまま出産を迎えると、さまざまなリスクがあるため、一般的には計画帝王切開が選択されます。33週頃に医師から38週頃の日にちを帝王切開日として決められます。

逆子

逆子の診断方法

逆子の診断方法にはいくつかの手段がありますが、最も一般的なのは超音波検査です。妊婦健診の際に行われるこの検査では、胎児の位置を正確に確認することができます。超音波画像を通じて、胎児が頭を下に向けているか、また逆子の状態であるかを医師が診断します。

また、妊婦さんによる自己チェックも可能です。妊娠後期においては、胎動を感じる位置で胎児の姿勢をある程度推測することができます。またお腹が盛り上がる部分が丸い場合、頭であることが多いので、逆子の可能性が高くなります。

逆子の診断は比較的簡単に行えるため、妊婦は定期的に健診を受けることが大切です。

逆子の診断

逆子の原因ははっきりわかっていません。さまざまな要因があるようです。
たとえば、下記のような要因があると赤ちゃんが子宮の中を自由な動きを阻害されてしまうために逆子になってしまうのではないかと考えられています。

  • 子宮の形状の問題(奇形や子宮筋腫)
  • 羊水の問題(羊水過多、羊水過少)
  • 胎盤の位置の問題(前置胎盤、低置胎盤)
  • 母体の骨盤の問題(狭骨盤)
  • 多胎児(双子、三つ子など)
  • 胎児奇形(水頭症など)  など

これらの要因が単体、もしくは複数重なって逆子となる可能性があります。

通常であれば28週位までは、お腹の中を活発に動き、逆子となっても自然に解消される可能性が高いのですが、週数が進むにつれて直る確率は低くなります。

一旦逆子になってしまうと、上記のような要因があると自力では直らない可能性が高まります。

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 ●「逆子(骨盤位)」とは?

逆子の発症率と自然に直る率

さまざまな医学書や、研究論文等から、逆子である確率を調べてみました。

逆子は、妊娠16~23 週では45%、24~27 週では34%、28~31 週で17%、32~35 週で9%、分娩時には全分娩の3~5%となるようです。

そして、28週までに約9割が自然に直る確率がありますが、その後徐々に自然に直る確率は減っていきます。

逆子の発症率と自然改善率

帝王切開

帝王切開は分娩方法の1つで、お腹を開腹して分娩をする方法です。
普通分娩(経腟分娩)では危険を伴うケースや、母体と胎児に危機が迫っている時に、リスクを回避するために行われます。

帝王切開には、計画帝王切開と、緊急帝王切開があります。

計画帝王切開(選択的帝王切開)が選択されるケース

  • 逆子
  • 前回の出産が帝王切開であった場合
  • 多胎児
  • 前置胎盤や低置胎盤
  • 子宮筋腫などで手術の既往がある場合
  • 母体の骨盤が狭い(狭骨盤)
    など

緊急帝王切開が行われるケース

  • 胎児の心拍低下など胎児の状態悪化
  • 妊娠高血圧など母体の状態悪化
  • 経腟分娩が難しくなった場合(陣痛が弱い、胎児が大きい、産道が狭いなど)
  • 計画帝王切開日よりも早く陣痛が起きた場合
    など

5人に1人が帝王切開で分娩している

厚生労働省の我が国の保健統計における「医療機関における分娩件数と帝王切開娩出術割合の年次推移(2008年~2020年)」などを基に、分娩数と帝王切開の割合についてグラフにまとめてみました。

分娩数(出産数)が減少しているにもかかわらず、帝王切開による分娩割合が増加傾向にあることが分かります。2020年では5人に1人が、帝王切開で分娩してます。

分娩数と帝王切開の割合
帝王切開の割合

一般病院(20床以上)と一般診療所(20床未満)を比較すると、一般病院で帝王切開を受ける妊婦の割合増加傾向にあります。

予定帝王切開だけでなく、緊急帝王切開も多い

2022年7月1日から7月30日に実施されたWEBアンケート調査(全国対象とした総計12,211件)の中で、妊産婦に対して行われた、医療機関に対する出産に関わる分娩サービスについてのアンケート調査では、第1位は「院内出産ができる」、第2位は「帝王切開ができる」を重要視していることが分かりました。
つまり、緊急対応が可能な医療機関で出産したいというニーズがあるということです。

 そして、このアンケートでは、帝王切開が2,150件(19.9%)に実施されていました。そのうち、帝王切開が予め予定されていたものであったものが、54.7%、緊急対応であったものが40.8%であり、経腟分娩の予定であっても、実際に経腟分娩ができるとは限らないことがわかります。

予定帝王切開と緊急帝王切開の割合

出典:厚生労働科学特別研究事業「妊産婦のニーズに適合した産科医療機関の選択に 必要な情報の内容と提供方法の検討のための研究 予備的報告」東京大学大学院医学系研究科医療経済政策学

胎児の脳の発達

胎児の神経系の発育は、妊娠初期から起こります。妊婦が妊娠したかどうか認知できていない妊娠3週頃から起こり、10週くらいまでに脳の基本的な構造が形成されていきます

妊娠中期には、脳にしわができて脳の発達が進んでいきます。

そして、妊娠後期は胎児発達の最終段階の時期であり、神経系もさらに発達が進みます。
出産時には大人の脳とほぼ同じ構造を有する状態になっています。ただ、機能面にはまだ未発達で、機能面で重要となる神経細胞のシナプスは生後1年の間に最も作られ、その後減っていきます。

胎児の脳の発達には、妊娠中の栄養状態、ストレスや情緒など、母体の心身の健康が深くかかわっていると言われているので、妊婦として十分な栄養をとり、リラックスして過ごせる環境を整えることは、胎児の脳の発達にとても重要になります。

逆子と脳の発達に関する研究結果

逆子と脳の発達に関する研究は、これまでにいくつか行われてきました。
これらの研究では、逆子が脳の成長に及ぼす影響については明確な結論に至っていないものの、いくつかの興味深い報告もあります。

ある研究では、逆子の状態が長期間続く胎児は、成長が遅いことが観察されました。ただし、これは脳だけでなく、身体全体の発達に関与しているため、逆子自体が直接的な原因とは限らないと指摘されています。

また何と言っても、逆子のままでの出産=骨盤位分娩(帝王切開ではなく逆子の状態で経膣分娩を行うもの)は、非常にリスクが高く、脳だけでなく体幹部に損傷を与え、出産後の発達に影響を与える可能性も否定できません。

したがって、妊娠中の逆子が直接的に脳の発達にどう関与するかは今後の研究でさらに深掘りされるべき課題ですが、逆子が出産まで継続した場合、出産方法について検討を行うことで、リスクを下げることが可能です。しかし、帝王切開で出産したとしても、リスクがないわけではなく、帝王切開による胎児が受けるストレスや環境は脳の発達に影響を及ぼすことも考えられます。

妊婦さんやそのご家族は、逆子によって不安を抱えることも多いかと思いますが、定期的な妊婦健診を受け、逆子の状態が長引く場合には専門医に相談し、適切な対策を講じながら随時アドバイスを受けることで安心感を得ることが重要です。

逆子が脳の発達に及ぼすリスク①

逆子が脳の発達に及ぼすリスクについて考てみると、最も大きなリスクがるのは、出産時に起こり得る合併症が挙げられます。

逆子の状態で経腟分娩を行う骨盤位経腟分娩を行うと、さまざまなリスクがあります。
リスクの原因は、一番大きな頭が最後に出てくることに起因しており、その他に胎児の姿勢などの問題も加わり、分娩時の牽出によって、神経損傷や骨折などの分娩外傷、腹腔内臓器の損傷、臍帯脱出や分娩遷延による仮死や死産、脳内出血などがあります。

脳への影響と言う部分に絞ると、臍帯脱出や分娩遷延によっておきる低酸素状態は、低酸素脳症を引き起こす可能性があります。

逆子による臍帯脱出

臍帯脱出とは、臍の緒が胎児よりも先に出てしまうことを意味します。
臍の緒が先に出てしまうと、胎児の体が臍帯を圧迫してしまうと血液供給が途絶えてしまい、胎児が低酸素になってしまいます。
低酸素状態が続くと低酸素性虚血性脳症になり、脳性麻痺などの脳性麻痺など後遺症が残る可能性があります。

臍帯脱出の割合は、全分娩で0.3%であるのに対し、骨盤位経腟分娩(骨盤位分娩)では3.7%との報告があります。

逆子による分娩遷延

分娩遷延とはいわゆる難産で、分娩時間が長引くことを意味します。
陣痛周期が10分以内になってから、初産婦は30時間、経産婦は15時間以内に出産に至らない時、分娩遷延と言います。長い時間子宮収縮が起こることで胎盤に供給される血液量が減少する可能性が考えられます。

低酸素状態が続くと低酸素性虚血性脳症になり、脳性麻痺などの脳性麻痺など後遺症が残る可能性があります。

新生児の低酸素性虚血性脳症(HIE)

出産時に低酸素となって十分な酸素が脳に送られないことで仮死状態が起こります。脳へ酸素や血液が不足した状態(仮死状態)が続くと、脳へのダメージがおこる新生児低酸素性虚血性脳症となります。
脳性麻痺や、重度の後遺症が残ってしまう可能性が多く、最悪の場合は死(死産)に至ることもあります。

ただし、低酸素性虚血性脳症と診断された赤ちゃんでも、元気に成長し、特別な問題なく成長できているケースもありますが、脳の発達に影響をうける可能性もあります。

  • 運動の発達(立つ、歩く、走るなど)
  • 知的な発達(話の理解、学習など)
  • 行動面の発達(友達とのコミュニケーション、こだわり、注意力、多動など)など

また、てんかん(けいれんを起こしやすい性質)や、食べることや呼吸などにも問題が残るケースもあります。

実は、仮死状態となって出生する子供は全分娩の約10%に起きると言われています。その数%に新生児低酸素性虚血性脳症という脳障害が起こります。低酸素性虚血性脳症の唯一の治療法が低体温療法ですが、低体温療法でも約50%は脳性麻痺やてんかんなどの重篤な神経後障害が残ります

逆子が脳の発達に及ぼすリスク②

2つ目のリスクは、早産に伴うリスクです。

逆子の種類の中で、足位や膝位の逆子のように足が産道に近いタイプでは、足で蹴って早期に破水が起こる可能性があり、早産になるリスクがあります。
破水をした時に、胎児より先に臍の緒が出てしまう臍帯脱出になる可能性が高くなり、仮死や死産、脳にダメージを受け、障害が残ってしまう可能性があります。

また、早産であると胎児の脳に必要な発達が十分に行われないリスクがあります。将来的な発達障害や学習障害のリスクが高まる可能性があるかもしれません。

逆子が脳の発達に及ぼすリスク③

3つ目のリスクは、逆子の状態が長期間続くことによるリスクです。

長期間逆子の状態が続くと、胎児が子宮内での自由な動きを制限されることがあります。その結果、正常な運動神経や感覚神経の発達に影響が出る場合もあるため、注意が必要です。

逆に胎児に異常があるために逆子である可能性もあるため、逆子の状態は身長に観察されるべきとも言われています。

逆子の治療法

逆子は妊娠後期までに自然に直る可能性もある反面、直らないこともあります。
逆子のままで出産に至り、骨盤位分娩には脳への影響が高くなるため、計画帝王出産という選択肢を検討する必要があるかもしれません。しかし、最も好ましいことは、計画帝王出産までに積極的に逆子を直すことではないでしょうか。

逆子の治療法には以下の3つがあります。

  • 外回転術
  • 逆子体操
  • 鍼灸(逆子の灸)
  • その他

外回転術(ECV)

外回転術は、36~37週頃に医療機関で行う治療法です。外回転術で逆子が直る確率は、約50%と言われています。
事前検査で、母体と胎児に特別なリスクがない場合のみに行うことができます。医師が腹の上から手で胎児の姿勢を頭位に矯正する方法で、痛みを伴うため麻酔を使うこともできます。リスクを伴うため、緊急対応ができる医療機関の手術室で行うものです。

外回転術のリスクは以下の通り

  • 常位胎盤早期剥離
  • 前期破水
  • 陣痛発来
  • 子宮破裂
  • 一過性の胎児心拍の低下  など

 外回転術をめぐる医療過誤で、2024年7月に刑事告訴が行われたというニュースは衝撃的です。
この医療過誤は、外回転術後に胎児の心拍に異常が起きたにもかかわらず、さらに2回目の外回転術を実施。術後、胎児には低酸素状態を疑う所見が何度も認められていたにもかかわらず、2日間も放置。心配した別の医師が2日後に緊急帝王切開を実施したが、産まれた赤ちゃんは、脳に重大なダメージを受けて、重度の後遺症(四肢麻痺やてんかんなど)が残ってしまい、全介助状態となってしまった。医師は誤りもせず病院を辞め、他の病院に勤めているとか。大変いたましい医療過誤です。

逆子体操

逆子体操は、胸膝位法と、ブリッジ法という2つのやり方がありますが、どちらもお尻を高くして、重力で胎児の位置をずらし、回転しやすい状態を作っていくものです。

医師や助産師がすすめる場合もありますが、医学的根拠に欠けるとして、禁じている医師もいます。
また、妊娠高血圧症など母体や胎児に問題がある場合には行うことを控えた方が良いと思います。行う場合には、担当医師に相談の上、行うことが好ましいと思います。
妊娠前から腰痛がある方、妊娠後に腰痛が起きている方の場合、特に胸膝位法は腰痛を悪化する恐れがありますので、専門家の指導の下行うことをおすすめいたします。

逆子体操

鍼灸治療と逆子

鍼灸治療は、逆子の改善方法として注目されています。薬を使わない療法であるため、近年、妊娠中の女性に対しても鍼灸が行われることが増えており、逆子に対する効果を期待する声も高まっています。
鍼灸は身体のツボを刺激することで、自然治癒力を高める効果があるとされています。特に、逆子の改善には、主に足先や足首にある特定のツボが有効とされており、鍼灸が胎児自身が回転して頭位になる手助けとなります。

中国の古典においては、難産の治療法として行われていた鍼灸法が近年になって逆子の治療法として行われるようになったことをベースに、昭和の時代に活躍した日本の産婦人科医が逆子に対する効果を発表してから、逆子治療として広く知られるようになりました。

市販のお灸を使って試す方も多くおられますが、市販のお灸では効果が薄く、やはり本格的なお灸(透熱灸)の刺激が効果を高めます。
また、お灸の取り扱いを間違えると火傷をするリスクもありますので、専門の鍼灸師に相談し、鍼灸院で施術を受けながら自身でもホームケアとしてお灸を継続して行うことが必要です。

鍼灸は外回転術のようなリスクや副作用はありません。釈由美子さん、大島美幸さんなどの芸能人ママたちも、逆子がお灸で直ったと報告されていますので、おためしください。

当院は逆子改善専門鍼灸院で、臨床経験も豊富です。個人差、週数の違いなどありますが、総合して当院では約91%以上の改善率があります。
週数が進むほど逆子は直りにくくなりますので、自然で直る可能性がある28週を過ぎたら、早めにご相談下さい。

その他の逆子を治す方法

  • 横向きで寝る・・・医師が横向きで寝る方向を指定することがあります。横向きで寝ることで胎児が回転することを期待するものです。
  • ヨガやストレッチなど・・・逆子体操など、妊婦に良いとされる軽い運動をする場合には、無理をせず、体調に気を付けて行ってください。
  • 音楽療法・・・好きな音楽を胎児に利かせる方法
  • 湯舟につかる・・・温かいお風呂につかることでリラックス効果を高め、胎児が回転することを期待するものです。
  • 8の字運動・・・赤ちゃんのハイハイのように、手と膝をついた四つん這いの姿勢で、8の字を描くようにして動きまわると、重力でお腹が下がり、胎児が回りやすくなります。
  • 床の雑巾かけ・・・昔は、床を雑巾かけをすると逆子が直ると言われていました。これも8の字運動のように、重力でお腹が下がり、胎児が回りやすくするものです。
  • ウォーキングなどの適度な運動・・・軽い運動は血流を改善し、胎児が回転することを期待するものです。

 効果には個人差がありますが、ご自身の体調に合わせて、できることを試していただくと逆子解消に結びつく可能性があります。

まとめ

逆子自体は妊娠中の一般的な現象であり、ほとんどの場合、妊娠後期までに自然に直る可能性がありますが、
出産まで逆子のままとなってしまうケースもあります。

逆子が胎児の脳の発達に直接的な影響を与えるという明確な科学的データはありませんが、逆子のままで出産する骨盤位分娩や、逆子による胎盤剥離や早産などに伴うリスクは、脳の発達に影響を及ぼす可能性があります。

また、逆子を治す外回転術という方法では、痛ましい医療過誤も起きています。

逆子を出産までに、リスクの少ない方法で直していくことが好ましいと思われますが、さまざまな情報が飛び交う近年において、冷静に判断し、信頼できる医療機関でアドバイスを受けながら、ご自身にあった経過と出産を迎え、元気なお子様を迎える準備を進めてください。