逆子を直すために、「ツボにお灸をすえる」という治療方法がありますが、どのようなツボが効果的なのか、ご存知でしょうか。
逆子に効果があるツボは、いくつかありますが、その中でも最も有名な2つのツボ「至陰(しいん)」と「三陰交(さんいんこう)」をご紹介いたします。
また、ツボの刺激の方法もいくつかご紹介しますので、ぜひセルフケアでお試しください。
至陰
逆子の鍼灸治療で代表的なツボの1つに、「至陰(しいん)」というツボがあります。
このツボは、正しくは、足の太陽膀胱経という経絡に所属し、経絡の最後にあるツボです。
膀胱経は、次に、足の少陰腎経に接続し、エネルギーが巡っていきます。
つまり、体の陽を巡ったエネルギーが、体の陰へ巡るエネルギーへと接続していく、まさに「陰に至る」ところにあるツボ、という意味のツボが「至陰」です。
東洋医学では「腎」は、生殖器と関係が深い臓腑の1つであると考えています。
生殖器関連の症状改善のために、腎に接続する腎経をダイレクトに刺激することが一般的な方法ではありますが、臓腑の表裏関係や、経絡の連続性など、東洋医学独特な考え方を加味し、一見関係がなさそうなところを刺激して、症状改善をはかる方法をとることもよくあることです。
ダイレクトに問題がある経絡を刺激するより、腎経へとつながる膀胱経を刺激を行うことで、よりマイルドに、体の調整ができるのでしょう。
この「至陰」というツボを刺激し、逆子を直していくことも、こうした考え方から生まれた治療法であり、また経験的に、実際に効果が高かったということから、広く知られるようになったものと考えられます。
「至陰」は、「足の小指の爪の外側で、爪の付け根の角より、2~3ミリ手前」というという位置にあります。
小指は靴などに刺激されていて、爪も変形している人もおり、なかなか正しくツボがとりにくいところなので、「爪の外側の付け根から、少し上」という、だいたいの場所で構わないと思います。
三陰交
この「三陰交(さんいんこう)」というツボは、足の太陰脾経という経絡に所属するツボですが、字のごとく、「3つの陰の部を巡る経絡が交わるところ」という意味のツボです。
足の太陰脾経の他に、先ほど出てきた足の少陰腎経と、足の厥陰肝経という3つの経絡が交わっている箇所です。
「経絡」は「電車の線路」に、「ツボ」は「電車の駅」に、例えられることがありますが、さしずめ、「三陰交」は、東京の電車で例えるならば、JRと東京メトロと私鉄が乗り入れしている東京駅、渋谷駅、新宿駅、上野駅といったところでしょう。
ツボは、後述のように、その箇所を刺激すると、経絡の巡りを整えることができ、また、経絡に接続している臓腑の機能を整えることができる治療点です。
複数の経絡が交わる要となるツボを刺激することで、交わる経絡全てに刺激が行きわたり、各経絡の巡りを整え、臓腑の機能を整えることができます。
つまり、もともと所属する足の太陰脾経の他に、足の少陰腎経と、足の厥陰肝経の巡りを整え、臓腑の脾だけでなく、腎、肝の機能を整えることが出来る、とてもお得なツボなのです。
腎は、先ほど生殖器と関係があると記しましたが、同様に、脾や肝も、生殖器と関係が深いと考えられていることから、この三陰交というツボは、広く女性の婦人科疾患に効果的なツボとして知られています。
「婦人科に効果的なツボを1つあげよ」と言われれば、どの鍼灸師も「三陰交」をあげると思います。
それほどとても代表的なツボで、女性に対する鍼灸治療で多用されるツボです。
三陰交の位置は、足首の内側にあり、内くるぶしの骨の一番高いところから、指4本上で、すねの骨のすぐ後ろの凹みです。
人差し指の指腹で、軽く皮膚表面を擦った時、凹んでいるような感じがしているかもしれません。また、少し力を入れて指先で押すと、ズーンと感じるかもしれません。そのような場所をご自身のツボだと考えてください。
その他のツボ
逆子治療には、前述の至陰、三陰交のツボ以外にも、実はいろいろなツボが使われます。
いくつかご紹介しますので、ぜひお試しください。
①陰陵泉
膝の内側の少し下にあります。むこうずねの骨(脛骨)の内側のへりを足首の方から撫で上げたとき、指が止まるところのくぼみにあります。
②湧泉
足の裏にあります。足の第2・第3指の間のみずかきと踵を結ぶ線を3等分し、みずかきから3分の1のところのくぼみにあります。
③足三里
膝の少し下にあり、膝のお皿の下端から指4本下で、むこうずねの骨(脛骨)の外側にある筋肉の幅の中央にあります。
④合谷
手の親指の根本にあります。手の甲側で、親指と人差し指の根本、水かきからさらに手首の方に、反対側の手の指を使って擦ったとき、骨がVの字になっているところの手前のくぼみです。
⑤太白
足の親指の内側の根本にあります。足の内側、足の甲と足底との境目で、外反母趾ができる足の関節の手前のくぼみです。
⑥太衝
足の甲にあります。足の第1・第2指の間のみずかきから、足首にむかって、指を擦ったとき、指が止まるところ、骨がVの字になっているところの手前のくぼみです。
ツボで症状改善をはかるとき、決して1つのツボで症状が改善するわけではありません。一般的には、いくつかのツボを組合わせていくので、ぜひいろいろなツボを組合わせておためしください。
そもそもツボとは?
そもそも「ツボ」とは何なのでしょう。
ツボ押しなど、セルフケアの方法として、認知度が高くなった「ツボ」ですが、東洋医学のことは少し分かりにくく、嫌厭しがちではないでしょうか。
ここでは難しいことは避けて、ミニマムに「ツボ」についてお伝えします。
ツボは経絡というめぐりのルート上のポイント
体には「気(き)・血(けつ)」という、体が健康であるために必要なエネルギー(=気)や栄養(=血)が「経絡(けいらく)」と呼ばれるめぐりのルートを通って巡っていると考えられています。
経絡には、体を縦に走行している「経脈(けいみゃく)」と、体を横に走行して、経脈と経脈を連絡している「絡脈(らくみゃく)」と呼ばれる2つの種類があり、これらを合わせて、「経絡」と言います。
例えるならば、経脈がJRの線路だとしたら、絡脈はさながら私鉄やメトロの線路といったところだと思っていただくと、分かりやすいのではないかと思います。
さて、経絡の中で、いわゆるツボを個別に持っているものは、経脈で、経脈は全部で12本あります。
この12本というのは、体の前面部に6本、体の後面部に6本の12本、また、手を巡るものが6本、足を巡るものが6本の12本というように、どこかに偏ることなく体全体をめぐっています。
各々のめぐりのルートは、足先または手先から、臓腑と呼ばれる内臓へとつながっており、つながっている臓腑の名称を使って、経絡の名称がつけられています。
例えば「足の少陰腎経」という経脈は、「足先から腎につながっている経脈」という意味です。
ではツボは何かと言うと、体の特定のポイントを指しますが、経絡(主に経脈)上のポイントがツボなのです。
先ほど、「経絡」は「電車の線路」と例えましたが、それに加えると、ツボは経絡上のポイントなので、経絡という電車の線路上に存在する「電車の駅」にあたります。
駅というツボを刺激すると駅が所属する線路に刺激が波及し、さらには、その先にある臓腑へも刺激が届き、体の調子が良くなるという仕組みなのです。
ツボの数は?
ツボは、正しくは「経穴(けいけつ)」と呼ばれ、古代中国では1年の日数に合わせた「365穴」のツボが体にあると考えていた時代もありましたが、WHOが中心となって整理され、現在は世界共通で「361穴」となりました。ただ、ツボの多くは左右対称に存在するので、全身合わせると「約670穴」というのが、よく使われる標準的なツボの数となっています。
その他、経絡に所属しないが、とても良く効くツボとして伝わっているツボには「奇穴(きけつ)」と呼ばれるものがあったり、近年の臨床経験から発表される箇所は、新穴(しんけつ)となります。
また、正しいツボの位置が分からなくても、肩が凝った時に自然と手が伸びるところや、押されて気持ちが良いところも「阿是穴(あぜけつ)」と呼ばれるツボの一種です。
これらのツボを加えると、とてつもない数のツボが存在します。
ただし、いわゆる「足つぼ」は、東洋医学のツボとは全く違い、反射区療法の考え方によるものです。
ツボの働きは?
ツボへの刺激は、健康増進、不調改善につながると、なんとなくご存知で、気が付いたら、ツボ押しをされている方もおられると思います。
もう少し、専門的にツボを説明してみると、次のような特徴がある箇所がツボと言えます。
- ツボは、軽く触ってみたり、少し押してみた時に、他の場所とは違う痛み(圧痛)や響きなど、特殊な感覚が起きる「反応点」です。
- また、その反応は、所属する経絡の不調や、接続する臓腑の不調を示唆し、体の不良を診断することができる「診断点」でもあります。
- さらに、その箇所に適度な刺激をすることで、所属する経絡の巡りを整えたり、接続する臓腑の働きを整えることができる「治療点」である、と考えられています。
ツボの多くは、現代医学的にとらえれば、関節、筋肉と筋肉の割れ目、筋肉から腱への移行部、腱の際、骨際、骨の孔部、動脈の上や静脈の上、神経の上部などにあたる部分に存在しています。
また、皮膚からの刺激は、自律神経を介して内臓に影響を及ぼしたりする反射作用などがあり、これらの作用、位置関係から、ツボの効果が期待できるものと解釈されています。
西洋医学的にみた時の働きについての解明は、今後の研究に期待するところです。
逆子の時、ツボ刺激はどうやるか?
逆子の時にセルフケアとしてツボを刺激する方法は、いろいろありますが、その中でも代表的ないくつかの刺激方法をご紹介いたします。
ツボ押し
人差し指や親指を使って、ツボを押します。
痛すぎるのは押し過ぎで、気持ちがいい程度、もしくは、少し痛いけれど気持ちがいい、という程度の力加減で押します。
また、ツボ押しは、押すリズムが大事で、キュッキュ早く押してしまうと、効果が半減します。ゆっくり押して、ゆっくり力を抜きます。
余裕があれば、呼吸に合わせ、息を吐く時にゆっくり押して、息を吸う時にゆっくり力を抜くと、効果的です。
できれば、押す前と、押した後、経絡に沿って手のひら全体で擦っておくと、より効果的です。
三陰交は、足の内側の下から上へ向けて擦ります。
至陰は、足の外側の上から下へ向けて擦ります。
お灸
「逆子にお灸」と昔から言われているように、お灸は逆子改善にとても効果的です。
「逆子とお灸のセルフケア」の中で、詳しく説明しています。ぜひご参考になさってください。
持続的なツボ刺激
ツボに持続的な刺激をする方法で、小さな粒状のものを、ツボに絆創膏などを使って固定し、長時間にわたって持続的に刺激します。
ツボを刺激する粒状のものは、昔は、ゴマや砕いた米粒などを使っていました。もちろんこうした食材を使っても良いですし、例えば、100円ショップなどで売られているビーズ(なるべく小さいもの)を使ってみてはいかがかと思います。
また、最近では、かわいい耳ツボジュエリーなどがあるので、楽しんで行ってみてください。
三陰交は、皮膚が弱い場所にあるので、なるべく小さい粒状のものを使い、固定している時間は短めが良いかもしれません。
至陰は、靴を履くときに当たって痛くなるかもしれないので、靴を履く時は、やめておいた方が良いかもしれません。
固定の持続時間ですが、まずは、数時間~半日程度で、一度皮膚の状態を確認してみてください。
半日ほど時間をあけて、また行ってみてください。
皮膚が弱い方は、ティッシュを1mmほどの小さな粒にまるめ、それを絆創膏などで固定してみてはいかがかと思います。
ドライヤー
ツボ1点というよりは、ツボ周囲のある程度広いエリアを温めるようにドライヤーを使います。冷え症の方には、ドライヤーは手軽に体をあたためることができる、優秀なホームケアグッズです。
赤ちゃんが逆子になってしまった妊婦さんは、冷え症で足が冷えている方が多いように思います。
積極的に足腰を温めることが、逆子を直す近道です。
お灸は、足先に手が届かないと、なかなかできないかもしれませんが、ドライヤーで温めることは、手軽に試すことが出来ますね。
ストレッチ・関節運動
東洋医学では、経絡の中に流れる気・血の巡りが良いことこそが、健康の必須条件であると考えています。不調がある時は、気・血の巡りが悪くなっている可能性があります。
体には複数の経絡が走行していますが、体は決してまっすぐではありません。体の凹凸に沿って、曲がりくねりながら巡っています。
川の流れと同じで、曲がりくねっているところは、流れが悪くなりがちです。経絡が曲がりくねるところは、調度関節部にあたるので、関節を動かして、積極的に巡りが悪くならないようにすることが大切なのです。
下半身が冷えやすい人は、足の指の関節、足首、膝、股関節をゆっくり回してみたり、ストレッチすると、温かくなります。
まとめ
逆子と診断を受けてしまった妊婦さんにとって、逆子が直って自然分娩できるかどうか、とても心配なことだと思います。
東洋医学では、特定のツボを刺激することで逆子を改善させるという方法があります。
有名な至陰や三陰交などのツボに、お灸などを使ってセルフケアでツボ刺激をなさってみてください。
週数や、個人差がありますが、逆子が直る可能性はあります。
もしやり方がよく分からない、刺激しても直る気配がない、33週を過ぎてしまった場合には、セルフケアではなく、早めに専門の鍼灸院にご相談ください。
当レジーナ鍼灸院は、逆子治療専門鍼灸院で、臨床件数は非常に多く、91%以上の改善率があります。
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