妊娠中におこる症状の1つに、妊娠中期以降に起きる腰痛があります。
赤ちゃんが大きく育つにつれて、起きる症状ですが、元々腰痛がある妊婦さんにとって、とても辛い腰痛症状になることもあります。

このページでは、特に妊娠後期に起きる腰痛についてまとめました。

妊娠中、どのくらいの人が、どのような腰痛になるのでしょう?

妊婦の7割から8割は、実は腰痛に悩まされているのです。
特に、腰痛のあった妊婦の7割が「妊娠後期の腰痛が最も辛かった」と回答しています[1]
妊娠後期の腰痛は異常ではなく、残念ながら妊娠中の多くの方に起こるマイナートラブルの1つなのです。

椅子からの立ち上がり、寝返り、1時間以上の座位、立位の保持、中腰、重いものを持ち上げ、歩行など、日常生活のさまざまな動作で腰が痛みます。
これらの症状は、娠前には腰痛とは無縁だった方にも起こり、妊娠前から腰痛の有無と腰痛の発生には関係がないことが分かっています[2]

 

妊娠中の腰痛

妊娠中の腰痛の原因は? 最新の報告から…

妊婦に限らず一般的にも多くの方が腰痛で悩まされていることからも分かるように、腰痛の原因はとても複雑です。
さまざまな原因が考えられる中、妊娠中におきる腰痛の原因をまとめると、大きくは次の2つに集約することができます。

  • 妊娠期に特徴的なホルモン、特にリラキシンの影響による腰痛
  • メカニカル・ストレス:腹部の膨大による腰椎前彎の増加、および重心の前方への偏りによる身体後面の筋肉(脊柱起立筋など)への影響[1]による腰痛

なお最新研究では、心理的要因(ストレス)も原因となることが明らかになっています。

 

リラキシンが原因で起きる「妊娠中の腰痛」の特徴

リラキシンというホルモンは、出産に備え、筋肉や靭帯を弛緩させる働きがあります。
骨盤周りの筋肉や靭帯がゆるむと、それに伴い骨と骨をつなぐ関節の接合もゆるくなり、可動性が増加します。
可動性の増加により関節が不安定となり、関節が特定の方向にねじられ、圧がかかると痛みを誘発します。

リラキシンは特に恥骨結合(図1を参照)の痛みと関係し、身体の前面や鼠径部(腰と足の境)の痛みの原因となりますが、出産後は分泌が止まるので、自然消滅するのが特徴です。

妊娠中の骨盤を前から見た図妊娠中の骨盤を横から見た図

妊娠中の腰痛に対するおすすめの対処方法

妊娠中の腰痛は、多くの場合、枕やクッションの利用、骨盤ベルト、マッサージ・ヨガ・ストレッチ・鍼灸などで対処されています。
マタニティ整体・鍼灸等は下半身の血行不良を改善し、身体を温める効果が証明されています(教科書)。

自宅で行うマッサージも効果はありますが、マタニティに特化した有資格者の施術を受けると、ご自身の腰痛はここまでコントロールすることができる、ということが分かります。
「こんなに痛くなるまで我慢しなくてもいいんだ」、「腰痛は楽になるんだ」ということを体感してもらえれば、心身への負担も軽くなります。

腰痛が出産後にも続くトラブルとして持ち越さないために、妊娠中期から腰痛に対して適切に対処し、早期から身体の負担を軽減していくことは、安全安心な出産にもプラスになるものです。

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[1] 妊娠中期と後期における腰痛と歩行およぶ身体活動量の変化と関連性;渡邊2020

 妊娠期の体重増加と腰痛発症時期との関連および対処法:安田2017

[2] 妊婦および褥婦における腰痛の実態調査;村井2003

[3] 妊娠時の腰痛が日常生活動作へ及ぼす影響;榊原2006

[4] Norén L, Ostgaard S, Johansson G, Ostgaard HC : Lumber back and posterior pelvic pain during pregnancy : 3-year follow-up. Eur Spine J, 2002 ; 11 : 267-27

[5] 妊娠に伴い発生する腰背部から骨盤周囲の疼痛の実態調査;梶原2011