逆子の原因はストレス?

赤ちゃんが逆子になる原因は、医学的にはまだよくわかっていない部分が多いのですが、どんなときに逆子になる可能性があるのかを考えていきましょう。

逆子は、正式には「骨盤位」といい、正常な状態(頭を下に向けた状態)を「頭位」といいます。
逆子になる原因を大きく分けると、妊婦さんと赤ちゃんの両面にあると考えられます。
原因が複合的に絡み合っている場合もあります。 逆子を引き起こす因子には、

  • 多胎妊娠など妊娠の特性によるもの
  • 骨盤や子宮の形など母体の体質によるもの
  • 巨大児などの赤ちゃんの発育や好む体位によるもの

の3つに分けられます。 また、冷えやストレス、姿勢などの生活習慣も逆子になる場合もあるようです。

逆子の医学的な原因は?

逆子は特別なことではなく、妊娠中はおよそ50%~70%が一時的に逆子を経験するという話もあります。
28週頃までは赤ちゃんはまだ成長する途中なので、子宮内にスペースがあり、赤ちゃんは子宮内を自由に動き回ることができます。
定期健診の時に逆子であっても、次の定期健診の時には正常な状態に戻っていることは妊娠中期にはよくあります。
そのため、医師が妊婦さんに「逆子」と初めて伝えるのは、妊娠8か月前後の妊娠26週~28週頃です。
それでもほとんどの場合、出産が近づくと、頭は大きく重くなって自然に下を向き固定されます。
胎児が自己回転によって頭を下にした状態になり、正産期に入る妊娠37週の時点で逆子なのは、全体の約3%と言われています。

赤ちゃんの姿勢の変化

  • 妊娠初期

    赤ちゃんがお腹の中を動き回っているので、この時点ではまだ逆子とは診断される時期ではありません。

  • 妊娠中期

    16週~28週にかけて、頭が下に下がり始めますが、この頃の30~80%の赤ちゃんは逆子となっているので、心配はありません。 赤ちゃんが何かの反動で逆さになるわけではなく、自然な状態に戻らなくなるのを逆子というのです。
    逆子の状態は、28週~30週頃には直ることが多いのですが、出産時まで逆子であると帝王切開になるため、「できるだけ逆子にはなってほしくない…」と思っている妊婦さんは多いですよね。
    しかし、実際には、妊娠中期までは半分近くの赤ちゃんが逆子だといわれ、決して少なくないのが現状です。

  • 妊娠後期

    32週を過ぎると、お腹のスペースに対して、胎児の体が占める割合が大きくなるので、自力で回転するのが難しくなります。
    妊娠後期での逆子は妊婦さん全体の約3%~5%だと言われます。

原因として考えられるもの

逆子の原因は、明確には分かっていませんが、逆子の原因となりうる因子、誘発因子には、以下のようなものをあげることができます。

  • 骨盤が狭い(狭骨盤)

    狭骨盤とは、「骨盤が狭い」という意味で、具体的には骨産道の一部、または全部の経線が短い場合を指します。
    身長が低い人(一般的には145cm以下)の人は、平均に比べて骨盤が小さい人が多く、逆子になりやすい傾向があります。

  • 子宮筋腫

    子宮内にできる良性の腫瘍で、生命を脅かすものではありませんが、筋腫が肥大することで子宮内が狭くなり、逆子になる可能性が高くなります。

  • 子宮奇形

    先天的に子宮が変形していたり、子宮に壁ができていたりするもので、子宮内が狭く赤ちゃんが頭位の姿勢になりにくいことから、逆子になる可能性が高くなります。

  • 羊水過少

    羊水過少とは、羊水量が100mlを下回っている状態です。羊水量が少ないと赤ちゃんが動きにくい環境であることから、逆子になる可能性があります。

  • 羊水過多

    羊水過少症の反対で、羊水量が800mlと羊水量が多いため、赤ちゃんが妊娠30週を過ぎても動き回れる環境となります。
    そのため、赤ちゃんが30週を過ぎた頃に急に逆子となってしまったり、前期破水を引き起こすなどのリスクを伴います。

  • 前置胎盤などの胎盤の位置

    前置胎盤とは、受精卵が着床した場所が子宮の下方で、胎盤が正常より低い位置に形成され、胎盤が子宮の出口(内子宮口)にかかっていたり、覆っていたりする状態です。
    胎盤の位置が低いため、赤ちゃんが頭位の姿勢になりづらいため、逆子になる可能性があります。

  • 臍帯(へその緒)の長さが短い

    臍帯の長さの平均は50cmくらいなのですが、赤ちゃんの動きが少ないと伸びず、短くなる傾向にあります。
    臍帯の長さが25cm以下の場合、過短臍帯(かたんさいたい)と呼ばれ、赤ちゃんが自由に動き回ることができなくなります。
    そのため、逆子になる可能性が高く、また、逆子になった場合直りにくくなる可能性があります。

  • 多胎妊娠

    双子などの多胎妊娠の場合、必然的に子宮内が狭くなってしまうため、逆子になる確率が上がります。
    双子の場合、1人が正常な頭位で、もう一人が逆子となることが多いようです。
    多胎妊娠は、逆子以外にも多くのリスクがありますので、慎重な経過観察が必要です。

  • 胎児の発育巨大

    妊婦さんの骨盤が平均的な大きさであっても、赤ちゃんの発育が良過ぎて体が大きいと、赤ちゃんが子宮の中で動くためのスペースが少なくなってしまい、逆子のまま戻れなくなってしまうケースがあります。

  • 胎児奇形

    水頭症などの胎児奇形で、逆子になっているケースがあります。水頭症だと頭蓋骨内に水が溜まって、胎児の頭が大きくなります。
    そのためいったん逆子になると、動きにくく、姿勢を戻しにくくなってしまいます。
    また、子宮内胎児発育遅延などでも逆子になっているケースがあります。

こうした原因による逆子は、直りにくい場合も多く、また赤ちゃんの安全のために、無理に直さない方が良いケースがあります。
自然分娩のお産では、赤ちゃんは一番大きい頭から産道を通過し、産道を広げながら生まれてきます。

しかし、逆子の赤ちゃんは頭が上に向いている状態なので、細い足から産道を通過してきます。
一番大きな頭が最後に産道を通過することになるため、頭が出にくくなります。またへその緒が途中で圧迫されやすくなるため、赤ちゃんに酸素が行きわたらなくなる可能性も起こります。

こうしたことから、逆子での自然分娩は、赤ちゃんにとってリスクがあり、難産となり、最悪のケースも起こりうるため、出産日間近まで逆子が直らなければ帝王切開を検討する必要が出てきます。
36週を過ぎても逆子が直らない場合は、リスクを避けるために帝王切開を勧められるのが一般的ですが、逆子でも条件が整っていれば、自然分娩が可能な場合もあります。(赤ちゃんの体重や心拍数、臍帯の位置など、医師や病院の判断によって条件は異なります。)

逆子で自然分娩を行い、万が一、分娩中にトラブルが起きた場合には、途中から緊急的に帝王切開に切り替える必要があります。
逆子の場合、足やひざが容易に出ても、体の中でもっとも大きくて硬い頭がなかなか出てこない場合があり、頭が引っかかって分娩が長引くと、赤ちゃんは呼吸ができず、生まれてくる赤ちゃんが仮死状態になったり、後遺症が残るリスクが生じます。
特に初産の人は、「なるべく自然分娩で赤ちゃんを産みたい」という希望があるかもしれませんが、逆子の分娩においては、リスクを考慮したうえで、分娩方法を選択していく必要があります。

現在日本では5人に1人が帝王切開での出産をしています。
出産数は減少しているにもかかわらず、帝王切開での出産数は過去20年間で約2倍に増えている、というデータがあります。
帝王切開での出産は、必要以上に悲観することではなく、計画的に帝王切開を選択した方が、リスクを低くすることができる場合があります。
経過を見ながら主治医と相談していきましょう。

生活習慣が原因?

逆子になりやすい生活習慣というのは特になく、はっきりしたことはわかっていません。
しかし、逆子と何らかの因果関係があると考えられてきた生活習慣を紹介します。

  • 妊婦さんの姿勢

    普段からお腹をかばうように前屈みや猫背の姿勢でいると、子宮が圧迫されるので、赤ちゃんが自由に動くスペースがなくなり、固定されて逆子の位置から戻れなくなります。
    背筋伸ばし、姿勢を正す習慣をつけましょう。
    他にも運動不足・座りっぱなしなど、血流を悪くする行動、体に負担が掛かる行動が逆子の原因として挙げられます。
    赤ちゃんは、お腹の中で居心地の良い姿勢をさがして、ぐるぐる回転しています。
    居心地の良い姿勢を探しているうちに、逆子になってしまいます。
    これは偶然によるもの、赤ちゃんの好みによるもので、誰が悪いわけでもありませんが、赤ちゃんの自由な動きを妨げるようなことは、防ぎたいものですね。

  • 冷え

    お腹が冷えると、赤ちゃんが頭を下に置きたがらないので逆子の原因になると、特に東洋医学では捉えられています。
    逆子を直すためにお灸や半身浴を実践し、冷えを改善した結果、逆子が直る妊婦さんは多くいます。
    また、冷えがすすむと、お腹の張りが強くなります。
    お腹が張りすぎるときも、赤ちゃんは自由に動けず、逆子になりやすくなるといわれています。
    赤ちゃんは一番思い頭を下にしても血液の循環は保たれます。
    しかし、妊婦さんの体(特に下半身)が冷えた状態だと、子宮内部の温度も下がってしまいます。
    下に行くほど冷えているので、胎児が頭を下にすると冷えて、循環不良となってしまいます。
    そこで、赤ちゃんは頭を防御するために、血流がか発で体温が高い妊婦さんの心臓に近い方に頭を向けるようで、逆子の原因にもなるといわれています。
    赤ちゃんは、生まれてくる前から既に自己防衛本能が備わっているわけですね。

  • 便秘

    腸は子宮に隣接しています。便が溜まっていると、子宮を圧迫して、胎児の動きを妨げてしまうことになります。
    たまった便が、血流を悪くし、お腹全体を冷やすという悪影響も考えられます。
    赤ちゃんの成長とともに腸が圧迫されるようになるため、妊婦さんはそもそも便秘になりやすいので、日ごろから便通を整えていることが必要です。
    また便をスルリと排便へと促す食物繊維が豊富な食材を積極的に摂るようにしたいですね。

  • ストレス

    人間はストレスがかかると血流の滞りが起きます。そのため、子宮周辺が硬くなり、赤ちゃんが動きにくくなってしまいます。
    イライラしたり、不安や悩みでいっぱいになったり…精神的ストレスを抱えていると、逆子になりやすく、また逆子がなかなか直らないと言われています。
    妊婦さんのストレス状態、緊張状態が続くと、子宮も緊張して固くなります。
    赤ちゃんが動きやすいのは、フカフカの柔らかい子宮です。 子宮の柔らかさをキープするためには、精神面でも柔らかく、リラックスが大切です。

妊娠中のストレス

妊娠初期は何かと不安が多い時期です。
待望の赤ちゃんを授かり、胸を躍らせるのも束の間、体の変化を感じやすい時期でもあります。

例えば、つわりや寝不足、体重の増加など、体調の変化だけでなく、何かとストレスに敏感になりやすく、リラックスできない状態が続きがちです。
赤ちゃんのことで不安になったり、日常のちょっとした事にでも、イライラする自分がイヤになってしまう妊婦さんも少なくありませんが、妊娠中は体も徐々に変化し、感情面でも女性ホルモンの影響や妊娠への不安により、ストレスを感じやすい状態ともいえます。

妊婦さんのストレスは、時にお腹の赤ちゃんにも悪影響を及ぼします。
赤ちゃんは妊婦さんの感じるストレスをお腹の中で同じように感じ取っていると言われています。
妊婦さんにストレスがかかると、抗ストレスホルモンが分泌され、赤ちゃんにも影響してしまうとも言われています。
また、妊娠中のストレスが蓄積されていくと、血管が収縮して血流が悪くなってしまいます。
赤ちゃんは、妊婦さんの血液から胎盤を通して栄養を受け取っているので、血流が悪くなると栄養を受け取れなくなってしまいます。

一人で悩まないで!!

妊娠中にストレスを感じる原因はさまざまですが、周囲の人に助けてもらいながら、上手に乗り越えていきましょう。
一人で抱え込まないことが大切です。
妊婦さんのイライラや不安が、赤ちゃんにも伝わっていることを理解して、少しでも楽しくマタニティライフを送れるといいですね。 妊娠~産後妊娠中・産後は、ホルモンの影響でイライラしやすいので、周りの方は、大きく温かく見守ることが必要です。
特に初めての出産の場合は不安でいっぱいです。
妊婦さんの気持ちに寄り添い、話を聞いてあげましょう。
妊婦さんがリラックスするとその気持ちが赤ちゃんにも伝わります。
妊婦さんにとって周囲の理解は欠かせません。
何でも一人で抱え込まずに、悩みや不安などがあれば、ご主人やご両親、友人などに相談しましょう。

気持ちを楽にして!!

妊婦健診に行くたびに、今日こそ逆子が直っていて欲しい、と思う妊婦さんも多いようですが、もちろん帝王切開もあり得ますが、逆子は意外と多いものなので、 心配し過ぎる気持ちは、それ自体がストレスとなり、よくありません。
自然分娩にこだわりすぎたり、帝王切開を避けたいがために、逆子を直すことばかり考えたり、過剰に逆子体操を行ってしまう人がいます。 体に大きな負担やストレスがかかると、かえって出産のリスクを高める原因となります。
逆子を直すためにできることを無理せずに、楽しく、取り組んでいきましょう。
妊婦さんが元気な笑顔で赤ちゃんを迎えられるように、リラックスして、気持ちを楽にして、出産の日を迎えたいですね。